紅茶の正体を知る
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紅茶の原料の茶の木は、ツバキ科の常緑樹で種類が2つあります。1つは「チャイナ種」で成長すると5メートルほどになり、寒さに強い性質があります。 もう1つは 「アッサム種」で、暑さに強く、高さは15メートルにもなります。
紅茶を作るための原料は、茶の木の新芽を摘んだものだけです。水を一滴も加えず、新芽を集めて萎れさせ、揉みながら葉の細胞を壊し、中にある成分を出して温度と湿度で調整して成分を結合させます。 すると葉の中の酵素が動き出し、発 酵が始まります。
これをそのまま放置すると、 発酵過程を過ぎて分解が始まってしまうため、酵素 の働きを完全に止めるために高温で加熱し、 水分を抜いて眠らせます。 これが完 成した紅茶です。
紅茶をいただくときは、よく寝ている茶葉を熱湯で目覚めさせ、水分を再び含ませて葉の状態に戻します。 茶葉はティーポットの中でジャンピングしながら、発酵 で生まれた成分をお湯に解き放ちます。
紅茶は、数あるお茶の中で最も多く生産され、そして世界で最もたくさん飲まれている飲み物です。
紅茶が他の飲み物と比較してどんな役割を果たすのかを確かめる方法があります。
紅茶とお水とコーヒーをベイクドチーズケーキと一緒にいただきながら、 どのよう に違うのかを比べてみましょう。 ベイクドチーズケーキをひとつ用意し、 飲み物は、 水、 紅茶、 コーヒーを用意します。
紅茶とコーヒーは少し冷まし、水は常温にします。 味を感じるセンサーである味蕾は、 体温に近い温度の方が正常に反応するので、味の変化を感じ取りやすくな ります。 味蕾は液体にだけ反応する性質があるので、 ケーキと水分でセンサーの 働きがよくなる組み合わせになります。
初めにケーキを小さくひと口食べて、同時に水を飲みます。 飲み込まずに口に 含んだまま変化を感じてみてください。 ケーキの味は水を含むとだんだんと風味 が薄まりますが、 油脂が重く口に残ります。
次に、 また同じくらいのケーキを口に入れて、今度は紅茶を飲みます。 ケーキが 紅茶に溶け込んでいくと素材のチーズの味がよりはっきりと感じられて、紅茶も甘 味を含んで味に丸みがつき、よりおいしく感じます。おいしさがだんだんと増して、
飲み込んだ後も、口や鼻の奥にベイクドチーズケーキのおいしさがキックバックして きてもう一度楽しめます。
これが紅茶の持つ役割です。
紅茶は、 糖質と油脂が加わるとプラスに働く飲み物です。 リッチな食材ほど豊か な味わいを押し上げながら、 砂糖の甘さをすっきりと感じさせ、 最後は紅茶の渋味 が口をリセットします。
紅茶によって、一緒に食べるスイーツが一段とおいしく感じられることに気がつ きます。 この理論を持ち、 スイーツがおいしくなるようにと原料紅茶を選んで商品 を作る私たちの紅茶を理解し、 好んでくださるパティシエさんがいることに喜びを感 じています。
ときに紅茶は、 お湯に色と香りがついたものと思われることがあります。 過去の私も実はそうでした。
しかし紅茶の特性を知るにつれ、 紅茶マジックと呼びたくなるような、 紅茶と食べ 物との関係があることに気がつきました。 これこそが紅茶が全世界で一番たくさ ん愛されている飲み物の理由だと私は思います。
では、コーヒーではどうでしょう。 ベイクドチーズケーキを口に入れてコーヒーを 一緒に含むと、 ケーキの表面の焦げ目とコーヒーの苦味が共鳴して、 苦い味が一 段と強くなったように感じます。 そしてケーキの焦げ目とコーヒーのローストの風味 と、油脂の重さが口に残ります。 コーヒーは、コーヒーと一緒になったときにプラス に働くスイーツを選ぶことで、コーヒーの役割もまた生まれます。
水と紅茶とコーヒー。 同じスイーツで飲み比べてみると、 その役割の違いが明らかなのを実感していただけたのではないでしょうか。 並べて試すことで飲み物の 役割が明確になるので、 おもてなしの場面でも安心して活用していただけると思い ます。
どうぞご自身でも飲み比べの実験をして、 紅茶のことを知ってください。 多くの楽しみや喜びが、 あなただけの組み合わせにまだ潜んでいるかもしれません。 紅茶の、油脂や糖質をプラスに変える特性をどうぞご活用ください。