Chapter 1:紅茶とは、どんな飲み物でしょう?
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学校から帰った娘に、背中越しに何か声をかけても受け止められる情報は少ないのですが、「紅茶をいれたよ」と声をかけてテーブルに準備すると、向かい合って座り互いに顔を見ながら話ができました。
手を動かしながら聞くときとは違い、 ティーカップに砂糖とミルクを加え、 スプーンでかき混ぜながら興奮気味に今日の楽しかったことを語り、 またポツリポツリと今日うまくいかなかったことを話してくれました。
娘が成人した今はその時間は減りましたが、若い彼女が自分を信じて思う道にいきたいと話してくれたのもまた、紅茶のあるテーブルでした。
顔を見ながらの会話からは、言葉以上にいろいろなことが伝わります。彼女と 向き合えるひとときであったティータイムが、よい思い出になっていることを今でも 幸せに思います。
1人のティータイムもまた、私にとっては楽しみな時です。
お湯を沸かし、茶器を取り出してテーブルに置く。茶葉を量り、温めたティーポッ トに茶葉を入れたときに生産地の香りがすることがあります。この茶葉を製造した 工場が稼働しているときの匂いが温めたポットの中で香る楽しみは、思い出と旅心 を刺激してくれます。
紅茶をいれるときにいつも思うのは、紅茶をいれることは、かつお節でだしを引くこととよく似ているということです。
茶葉もかつお節と同じように、保管方法に気を遣います。湿気させないように、砕けないように、 紫外線を避けること。だしを取るときの水質で風味が変わるところも似ていますし、種類が違うとだしの色も違うなど、紅茶と同じと思うことが多くあります。
紅茶をだしと考えると、濃くいれたものは後からお湯で割って調整することが可 能ですが、 薄くいれてしまったものは味を濃くすることができないなど、いろいろと 気がつくことがあります。
だしを丁寧に引くように、紅茶を丁寧にいれる。すると眠っていた茶葉が、気持ちに応えようとしてくれます。